〈シリーズ〉SDGs 企業・自治体の取り組み

東京都国分寺市

 東京都国分寺市のSDGsの取組をご紹介します。
 今回は、国分寺市役所の部門横断による若手有志職員のワークショップを取材しました。
 このワークショップ活動を支援した国分寺市政策部政策経営課の三上拓也氏にお話していただきました。
 ワークショップのメンバーは男女15名の職員で構成され、3つの班に分かれて活動し、3か月間にわたり月1回のグループ討議や調査活動等を行いました。当初はSDGsに詳しくない職員もいましたが、若者らしい熱気ある論議を通して知識を深め、SDGsに先進的な企業や専門学校のインタビューをすることで、ビジネスや教育におけるSDGsの広がりを体感できたと語ってくれました。
 また,ワークショップの成果物として、令和3年3月末策定予定の市の最上位計画「国分寺市総合ビジョン」に掲載する市民向けの啓発資料となる「(仮称)はじめようSDGs」を作成しています。
 本レポートは、ワークショップの活動と「(仮称)はじめようSDGs」をベースに報告します。

さまざまな個性が輝くまち

 国分寺市は東京都の中心「へそ」に位置する都市で,新型コロナウイルス感染症の影響で昨年7月から東京都の人口が転出超過に転じている中,国分寺市の人口は本年1月1日現在で126,862人と昨年の同時期より約1,700人増加しています。
 市内にはJR中央線・武蔵野線,西武国分寺線・多摩湖線が縦横に走っていて,中でも国分寺駅は,多摩地域の交通の要衝となっています。本年2月には,国分寺駅北口再開発事業により整備した駅前広場が完成し,国分寺の新たな顔となっています。
 国分寺市は奈良時代の天平の昔,全国最大規模を誇る武蔵国分寺が建立された歴史のまちです。また,名水百選の「お鷹の道・真姿の池湧水群」をはじめとした自然豊かなまち,そしてロケット開発の礎となる日本初のペンシルロケット水平発射実験が行われた日本の宇宙開発発祥の地,新幹線ひかり号誕生の地といった科学技術のまちでもあります。

「国分寺市総合ビジョン」へのSDGsの反映

 国分寺市は、まちづくりの最上位計画である「国分寺市総合ビジョン」の各施策とSDGsの17のゴールの関係を整理し,「国分寺市ビジョン後期実行計画」を策定しています。計画に位置付ける各施策の推進を通して,成長し,持続可能なまちづくりを目指すこととしています。
 計画の立案に際しては,市民ワークショップや職員ワークショップなどを開催し、そこで寄せられた意見を計画へ反映していくよう努めています。
 国連広報センターによれば、「SDGsは、すべてのステークホルダーと人々の声を取り込んだ、3年間にわたる透明な参加型プロセスの成果」です。国分寺市が行政計画の策定に当たって,共に市の未来を築き上げるパートナーである市民の意見を聞く姿勢は、正にSDGsの策定プロセスに通じるものがあると言えます。

国分寺駅北口駅前広場は,市民ワークショップの検討を踏まえ武蔵野の森とハケ(国分寺崖線)のイメージを具現化したデザイン国分寺駅北口駅前広場は,市民ワークショップの検討を踏まえ武蔵野の森と
ハケ(国分寺崖線)のイメージを具現化したデザインとなっている。

市民と共に取り組むSDGs

 SDGsの推進のためには、行政が市民や事業者と協力して取組を進めていく必要があります。そのため国分寺市では,これまでにも市報や公式ホームページ等における広報活動、事業者や大学と連携した市民向けのSDGs講座・ワークショップなどを積極的に実施しています。また、それ以外にも他団体の名義後援などサポートする立場から市民のSDGsの推進に向けた取組を支援しています。

市名義後援イベント「chart project® for SDGs in KOKUBUNJI」

 「chart project for SDGs」とはSDGsに関連するグラフデータをアート作品に生まれ変わらせるというプロジェクトで,社会課題を表すグラフ線の上に,その社会課題が改善された「理想の未来」を描いたアート作品を通して,子どもから大人まで様々な人々が思い描くゴールを多くの人のもとに届ける取組です。国分寺市内の小学校,国分寺市で活動するアーティストや近隣の美術大学生を対象に,「国分寺市のごみ問題」に関するグラフ(チャート)の線に,国分寺市の未来の街を自由に想像して描いた作品の募集を行い,応募のあった全作品の展覧会を国分寺駅直結の商業施設「ミーツ国分寺」にて行いました。
 実施に当たっては,プロジェクト実施団体と国分寺駅北口直結の商業施設「ミーツ国分寺」を運営する民間事業者が企画・運営を行い、国分寺市はこの取組を名義後援し支援しました。

<国分寺市のごみ・資源物総量の推移(グラフ)とアート作品>

<国分寺市のごみ・資源物総量の推移(グラフ)とアート作品><国分寺市のごみ・資源物総量の推移(グラフ)とアート作品>

SDGsをより身近に―「わたしたちにできること」・「企業等取組事例」の紹介

 「(仮称)はじめようSDGs」では、SDGsの趣旨や17のゴールを説明しています。
 市民がSDGsをもっと身近に感じてもらえるように具体的な行動事例を「SDGs推進のために わたしたちにできること」としてまとめています。また,国分寺市と「地域活性化包括連携協定」などでパートナーシップを組む企業や団体の中から3者の取組事例を紹介しています。
 国分寺市に本社を置く、リオン株式会社へのインタビューでは、「難聴の子どもが補聴器によって初めて音に触れることができた感動をつづった手紙をもらった時の嬉しさ」が製品開発のモチベーションの一つとなっている話を伺うことができたそうです。
 正に補聴器のイノベーションを通じて、SDGsの理念の一つ「誰一人取り残さない」が実現していく現場を知るエピソードと言えます。

<国分寺市のごみ・資源物総量の推移(グラフ)とアート作品>作成中の「SDGs推進のために わたしたちにできること」

まとめ-SDGsは地域課題や社会課題に取り組む共通言語

 現代の社会課題や地域課題は、新型コロナ対策を見ても自治体だけで解決することが困難になってきています。持続可能な社会の実現は、地域に暮らす多様なステークホルダーの力を合わせることが必要です。具体的には、市民や地域の企業、専門性のあるNPO・NGOなどの民間セクターにも参画してもらい地域が一体となって取り組むことが大切であると言えます。
 SDGsは、「No one left behind(誰一人取り残さない)」という理念に加え、「Multi Stakeholder Partnership (多様な連携)」や「Ambition to Action(行動が大事)」、「Back-Casting(あるべき姿からのアプローチ)」などの重要な考え方があります。
 国分寺市は、「国分寺市総合ビジョン」で“あるべき姿”と施策を示しています。
 そして地域の民間セクターとの多様な連携を推進することで、行動の重要性を市民にも訴え、SDGsを共通言語に市民と共に歩む決意をしています。

<国分寺市のごみ・資源物総量の推移(グラフ)とアート作品><国分寺市若手有志職員とワークショップの様子>