東レ株式会社は、4月中華人民共和国香港特別行政区(以下「香港」)のチョンクワンオウ海水淡水化プラント向けに、逆浸透(RO)膜を受注した。今回の受注は、20年以上にわたって世界中の海水淡水化プラントにRO膜を納入し、技術サポートによりプラントの安定運転を支えてきた東レの実績が認められたものとなる。

逆浸透(RO)膜

60年前から世界の水不足の解決に取り組む

最新調査によれば、世界の総人口の2/3にあたる40億人が年に1ヶ月間は深刻な水不足に悩まされており、年々悪化の一途をたどっているという。また、年間を通じて水不足に苦しむ人々は5億人にも達し、国連の国際資源パネルは、2030年までに増加する水需要に対し供給が40%不足すると警鐘を鳴らしている。東レはそれらに先駆けて、1960年代後半からこの水の問題を注視し、海水を淡水にして利用するための逆浸透(RO)膜の開発にいち早く着手することで世界が直面する水不足の解決に取り組んできた。

今回受注が決まったプラントは、香港では初の大型海水淡水化プラントとなり、造水量は13.5万m3/日で香港における飲料水の約5%を賄うことになる。プラントの完成および稼働開始は2023年末を予定しており、造水量は将来的に27万m3/日の規模に拡張していく。

東レの技術が香港のインフラ維持を大きく支援

香港は水道水源を貯水池から20-40%と中国本土・広州の東江から60-80%得ているが、人口増加や経済成長に伴う水需要の増加、気候変動による異常気象や深刻な干ばつに対応するためには安定した水源が必要となる。また、珠江デルタの急速な発展による東江の水供給ストレスの増大への対応も求められていた。そのため香港水務署(水道部)は近年、より厳格な水管理に取り組んでいる。そして、今回水資源を多様化する戦略の一環として、気候変動の影響を受けにくい海水淡水化プラントの導入が進められた。

東レは、製品のみならず世界の海水淡水化プラントで培ってきた技術サービスをチョンクワンオウ海水淡水化プラントに提供し、香港のインフラ維持を大きく支援していくことになるだろう。

RO膜の生産・販売・技術サポートが様々な分野に展開

東レは、長年にわたるRO膜の生産・販売・技術サポート体制の拡充により、世界中の水処理プラントを支えてきた。その用途は、海水淡水化をはじめ、廃水再利用から工業用途にまで及び、水を使う様々な製造プロセスの効率化や循環型水システムの導入に取り組み、質の低い処理水を高品質な工業用水に変換する技術なども開発してきた。また、水産業や農業などにも多様なフィールドでその技術は活かされている。

RO膜の累計出荷数量は、生産数量ベースで1億500万m3/日であり、生活用水換算で7.3億人相当の需要を賄う量に相当するまでに拡大している。

東レは、2050年に目指す世界を示した「東レグループ サステナビリティ・ビジョン」や、持続的かつ健全な成長の実現に向けた長期経営ビジョン“TORAY VISION 2030″の中で、安全な水の提供を東レグループが取り組むべき課題として掲げている。

今後も、RO膜をはじめとした最先端の膜技術を提供し続けることや、需要地での技術サービスをより一層強化することにより、産業拡大、人口増加により今後ますます水需要が拡大することが見込まれるアジア地域をはじめ世界の水問題解決に貢献していくことになるだろう。