公益財団法人イオン環境財団と早稲田大学環境総合研究センターは1月19日に、早稲田大学大隈講堂にて「AEON TOWAリサーチセンター 里山シンポジウム」を開催した。

公益財団法人イオン環境財団と早稲田大学環境総合研究センターの両者は、時代に即した環境課題の解決を目的に、2020年に「AEON TOWAリサーチセンター」を設立。双方のこれまでの経験や知見、学術研究を結合し、環境をはじめとした地域課題対応や人材育成など新たな価値を創造することで、持続可能な社会の実現を目指している。

2回目となる同シンポジウムは、「多世代で語る共に育つ里山」をテーマに、里山について、大学生・専門家が、各活動地での研究で得た知見をもとに、活動地の自治体関係者を三部構成でプレゼンテーションやパネルディスカッションが行われた。

挨拶に立った公益財団法人イオン環境財団理事長であり、AEON TOWAリサーチセンター共同代表の岡田元也氏は「竹と笹、葛の葉とツル、せいたかあわだち草だけの山林となり果てている里山は現在の日本の社会や人間関係を象徴しているかのようにも思う」と所感を述べ、未来により良い社会、より良い生活、より良い地球のために新しい里山の定義化が急務であることを強調。新しい里山を中核に地球環境、人と生活、地域社会、これらの再構築を目指したいと抱負を語った。

早稲田大学総長の田中愛治氏はイオン環境財団寄附講座を社会科学部に設置されたことを報告。大変満足のいく内容だったという声が届いていることを伝え、イオン環境財団やAEON TOWAリサーチセンター共同代表の岡田元也氏に謝意を表した。

イオン環境財団寄附講座を早稲田大学で開講

第一部「社会デザインのきっかけとなる里山」では早稲田大学AEONTOWAリサーチセンター副代表であり、早稲田大学環境総合研究センター上級研究員の岡田久則氏がモデレーターとして登壇。現代の様々な問題を反映している里山をベースに「たくましい知性」と「しなやかな感性」を備えた研究・人材育成・共育プラットフォームを形成していきたいと語った。また地域密着型・生活者目線・実装重視の里山への取り組みは生物多様性に加え、カーボンニュートラル達成の1丁目1番地となることを力説。「豊かな自然環境を守り育む里山」「地域の伝統・文化を守り抜く里山」「被災地の地域再生に資する里山」「地域のなりわいを育む里山」「都市生活を再構築する里山」とその役割に応じて里山を類型化し、荒廃している里山の立て直しがまさに社会デザインのきっかけとなると述べた。

続いて同氏は今回開講されたイオン環境財団寄附講座について紹介。そこには座学と現地調査が設置され、イオン環境財団のメンバーやイオンの渡邊副社長も「サステナブル経営『人間尊重』の活動取組み」の授業を担当し、さらに毎学期ごとにイオンピープルが登壇していることを報告した。後半は現地調査に参加した学生、受け入れ自治体・地域、メンバーからプレゼンテーションが行われ、北海道厚真町や山形県小国町の研修事例が説明された。

グローバルに学生たちの提唱や活動が紹介

第二部では「共に育つきっかけとなる里山」と題し、AEON TOWAリサーチセンターの多様な活動の中から学生がイオンピープルとともに行っている取り組みを同リサーチセンター事務局長で理工学術院 環境総合研究センター上級研究員研究院教授)の永井祐二氏と県立広島大学MBA吉川成美によって紹介。まずはアジア学生交流環境フォーラムASEP(Asian Students Environment Platform )の活動が報告された。

ASEPは早稲田大学を出発点として2012年からスタートした壮大なプログラム。同プログラムは当時イオン環境財団の名誉会長だった岡田卓也氏が早稲田大学を拠点として10年の間にアジアの10大学をつなぎ、多くの学生たちが共通の環境問題に対して現場から学び、課題解決につながる国際的な交流プログラムを創設しようとの呼びかけで始まった。2022年8月には早稲田大学がホスト校になり、「SATOYAMA:OurFutureCOMMONS」をテーマに開催された。

ここではASEPのメンバーの一人であるマレーシアの学生がリモートでプレゼンテーション。自然と人が自分たちの住む地域で交流できる「コモンズインザシティ」や絶滅していく動植物を守る「シェルター」を都市につくることなどが提唱された。

さらにコロナ禍の合間を縫って行われた各種現場プロジェクトの実践例も報告された。

様々な世代によるプレゼンテーションとディスカッション

「課題解決のきっかけとなる里山」をテーマにした第三部では冒頭モデレーターの岡田久則氏が今年度を総括。上半期は「寄附講座」「企業セミナー」「サークル連携」など仕組み作りが行われ、「共育」基盤の構築、試行が実施しされたこと。ASEPなど従来企画の連携とテーマに一貫性を持たせる取り組みが行われ、現場実習での活用が重点的に実施され、里山研究に拡張と活用に実践が行われたこと、さらにそれらの過程で学内関係者を広げ、テーマがマッチする複数研究者を巻き込むことができたと述べた。

後半では、南川秀樹氏(日本環境衛生センター理事長、イオン環境財団理事、元環境省事務次官、AEONTOWA未来構想会議委員、中国政府環境委員会国際委員)、

高木浩徳氏南島原市みんなの森守協議会事務局長の他、早稲田大学の学生や昨年に引き続き阿蘇の麓からリモート参加した大津さんご一家が登場。里山の可能性をどう捉えているかについて様々な世代からプレゼンテーションとディスカッションが行われた。

最後に小野田弘士氏早稲田大学環境総合研究センター所長AEON TOWAリサーチセンター共同代表が統括。与えられた問題に対する答えを出すよりもどこに問題があるかを見つける力が求められる今、このシンポジウムやAEON TOWAリサーチセンターそのものがそれらを先取りするプラットフォームであり、今後もその活動を持続可能していくことが重要であると述べた。