都道府県や市町村別などの地域毎に評価することで、より大きな割合で自然エネルギーを供給している地域を見出し、自然エネルギーにより持続可能な地域を将来に渡り増やしていくことが重要です。そのため、2007年から毎年、「永続地帯研究会」(千葉大学倉阪研究室と環境エネルギー政策研究所(ISEP)の共同研究)として日本国内の地域別の自然エネルギー供給の現状と推移を明らかにしてきています※1。地域における自然エネルギーの割合が、その地域の持続可能性の指標として有効であり、その地域の特性に応じて太陽光や風力、小水力、地熱、バイオマスなどの様々な自然エネルギーを活用した実績を指標として評価することにより、これまで経済的な指標などでは捉えられなかったその地域の持続可能性を評価することが可能となります。2022年6月に「永続地帯2021年度版報告書」※2で公表されたエネルギー永続地帯のデータ(2020年度推計)より、地域別の自然エネルギーの割合から各地域の特徴をみていきたいと思います。

日本国内全体では、自然エネルギー(大規模水力を含む)の年間発電電力量に占める割合がようやく2020年度に21.2%になりましたが※3、2021年(暦年)では22%を超えています※4。2020年度の自然エネルギーの年間発電電力量の内訳をみると太陽光発電が8.9%と最も大きな割合になっており、水力発電(大規模水力を含む)が7.8%とその次に大きな割合を占めていますが、風力は1%未満、地熱は0.3%に留まっています。

※1  永続地帯ホームページ https://sustainable-zone.com/
※2  ISEP「永続地帯2021年度版報告書」公表  https://www.isep.or.jp/archives/library/13960
※3  ISEP「国内の2020年度の自然エネルギーの割合と導入状況(速報)」https://www.isep.or.jp/archives/library/13427
※4  ISEP「2021年の国内の自然エネルギー電力の割合(暦年・速報)」https://www.isep.or.jp/archives/library/13774

公表されたエネルギー永続地帯のデータ(2020年度)を市町村別にみると地域的エネルギー自給率(地域の民生および農林水産部門のエネルギー需要に対する自然エネルギー供給の年間の割合)が100%を超える地域が174市町村に達しています。ここで、エネルギー需要には電気と熱の年間需要量を都道府県データから世帯数や従業員数などで按分することで市町村毎に推計していますが、運輸部門は含まれていません。地域での自然エネルギーの供給では、太陽光、風力、地熱、バイオマス、小水力(1万kW以下)による年間発電電力量、太陽熱、バイオマス熱、地熱(地中熱や温泉熱)の供給量が含まれています。電力量だけを評価して地域の電力需要量に対して自然エネルギー供給の割合で100%を超える「電力永続地帯」と評価された市町村は272に増えています。

都道府県別にみると、秋田県と大分県が地域的エネルギー自給率が50%を超えました。民生(家庭、業務)および農林水産用の電力需要と比較した地域的な電力供給の割合(地域的電力自給率)で比較すると、秋田県、鹿児島県、宮崎県、大分県の4つの県で、が60%を超えています(図)。さらに17の県で、その割合が40%を超えていますが、都道府県毎に特徴があります(表)。第1位の秋田県では地域的な電力供給の割合(地域的電力自給率)が約75%に達し、その中で風力が約33%と大きく、地熱も約17%、小水力も約13%ありますが、太陽光は約7%と全国の中でも割合が小さくなっています。風力の割合が10%を超える都道府県は、この秋田県と青森県(約26%)しかありません。また、地熱が10%を超える都道府県もこの秋田県と大分県(約17%)しかりません。さらに小水力の割合が10%を超える都道府県もこの秋田県と富山県(約25%)、長野県(約17%)および鳥取県(約11%)しかありません。つまり、秋田県は風力、地熱および小水力の割合がいずれも高いという自然エネルギーに恵まれた地域となっています。地域的電力自給率で第2位の鹿児島県は、64.1%ですが、太陽光が約42%ともっとも大きく、風力も約7%、小水力も約5%、地熱が約4%あります。全国で太陽光の割合が40%を超える都道府県は、宮崎県(約44%)、鹿児島県、三重県(約41%)、群馬県(約40%)の4県となっています。太陽光が30%を超える都道府県は10、20%を超える都道府県は23に上ります。第3位の宮崎県の地域的電力自給率は約64%で、太陽光の割合が44%に達して全国で最も割合が高くなりましたが、バイオマス発電も約12%あります。第4位の大分県は、2018年度までの推計値では地域電力自給率は第1位でした。大分県の地域的電力自給率は63.4%で、太陽光の割合が約34%で、地熱が約17%、小水力とバイオマスがそれぞれ約6%ずつとなっています。なお、バイオマス発電は宮崎県が11%と最も高く、高知県が約8%で、岩手県、島根県、大分県および秋田県が約6%で続いています。

表: 県別の地域的電力自給率(トップ10)
(出所:永続地帯研究会)

さらに、272もの市町村では電力需要に対して100%を超える割合の自然エネルギーが供給されていると推計されています。風力発電だけでも100%を超える市町村は48あり、地熱発電では7市町村ですが、小水力発電では78市町村あり、前年度より増加しています。一方、2012年にFIT制度がスタートしてこの10年間で太陽光発電の導入が急速に進み、104の市町村では太陽光だけで地域的電力自給率が100%を超えており、前年度から大幅に増加しています。これらの発電設備のほとんどは、地域外の企業が所有・運営しており、地域の自然エネルギー資源を地域主体で活用するコミュニティパワー(ご当地エネルギー)としての取り組みが求められています。また、地域での普及の遅れがみられる自然エネルギーの熱利用(太陽熱、バイオマス、地中熱など)への本格的な取り組みも期待されています。

熱も含む地域的エネルギーの供給率が100%を超える市町村の数が174を超えましたが、圧倒的に電力による寄与が大きい状況です。全国の地域的エネルギー自給率の平均値は17.3%ですが、電力供給分が15.8%、地熱などの熱供給分はわずか1.5%となっています(ただし、電力は一次エネルギー換算で評価)。熱需要に対する自然エネルギーの割合は5.4%ですが、その中で、21.4%の大分県(地熱)、17.2%の鳥取県(バイオマス)、14.3%の秋田県(バイオマス、地熱)、14.2%の佐賀県(バイオマス)、13.6%の熊本県(太陽熱、バイオマス、太陽熱)、13.4%の高知県(バイオマス、太陽熱)、12.8%の宮崎県(太陽熱、バイオマス)、11.9%の福井県(バイオマス)、11.4%の岡山県(バイオマス)、10.6%の山口県(バイオマス、太陽熱)、10.5%の岩手県(バイオマス、地熱)、10.3%の徳島県(バイオマス)、10.2%の静岡県(バイオマス)および10.1%の鹿児島県(地熱)は自然エネルギー熱の割合が10%以上の県になっています。

図 : 都道府県別の自然エネルギーの供給割合のランキング(2020年度推計値)
出所:永続地帯研究会(千葉大学倉阪研究室+環境エネルギー政策研究所)